多言語文化芸術歴史

怖くて行けない外国の病院(日本人とオノマトペ)

2021年12月5日

 私はある時、海外で病気にかかったことを想像して、大変不安になったことがあります。「病院に行った時に、痛みの状態をどう医師に伝えたら良いのだろうか」と。

 多言語を学んでいる私は、そのひとりであるフランス人の先生に質問しました。そうしたら先生は一言、「そんな言葉はありません。」

 実は私は、オノマトペを使って「足がズキズキ痛んだ時」のことを聞いたのです。 

 日本人なら誰でもわかりますが、実際に存在する音だけでなく、物の印象や感触、自分の体や心の状態を表すときにまでオノマトペを使いますね。時に動詞を使わずにオノマトぺだけで過ごすことさえあります。

 「太陽はギラギラ。顔や手足はヒリヒリ。お腹はグーグー。喉はカラカラ。頭はガンガン。足はズキンズキン。だからこれから、ヒンヤリした場所で、キンキンのビールをゴクゴク飲んだら、スヤスヤ眠れると思うんだ。」

 様々な虫や鳥や動物の鳴き声の表現までもオノマトペに変えてしまうのは、日本人とポリネシア人ぐらいなのだそうで、外国人にとってはカルチャーショックのようです。

 おおよそどの言語でも、「足がとても痛い」とか「頭が激しく痛い」とかしか言いようがないことを知った時は、「どうやって微妙な症状を伝えたらいいんだろう。絶対に外国では、病気にかかっちゃいけないんだ」と思ったものです。

 ちなみに、みなさん、日本の伝統芸能の場合、笛の楽譜はどう書かれているか知ってますか?

 そうです。オノマトペです。もちろん縦書きの文書で、「オヒャラリ、ヒウイヤラリ…。」

現代の日本人でもビックリでしょう?

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