Life

アンデスの歌うネズミ

2022年8月1日

 我が家には、「アンデスの歌うネズミ」とあだ名される「デグー」がいます。体はネズミしっぽはリス、頭脳は人間の3歳前後だそうです。世話は簡単。自分で砂風呂に入り、歯は木で、爪は自らかじって整え、耳は器用に後ろ足で掃除をします。水筒の水以外は、乾燥した低カロリーの草や実しか食べないので、エサかと間違えるほどの硬くて無臭の小さなフンをするだけ。唯一ささやかに匂うのはおしっこだけです。健康的で8年前後の寿命だそうです。

 やってきたのは生後3ヶ月、とっても臆病な雄のアオちゃん、いつも社交的な雌のシロちゃん。初めは握った手のひらに収まるくらいでしたが、およそ生後2年になる現在は、からだを伸ばすと開いた手の指先からはみ出るほどになりました。

 幾つかの言葉持っていて、機嫌良さそうに「ピルピル」とか、幾つかの音色で「ピーチク」とさえずったり、呼びかけるように「チーチー」と鳴いたり、警戒して「チューチュー」と叫んだり、甘えたり怒ったりした時は「ギューン」と言います。

 我々を家族と思っているらしく、夕方帰宅した母がまだ顔も見せていないのに、ハンモックから降りてくるし、我々と一緒の食卓についているかのように、主食の牧草を食べ始め、まるで溶けた餅のようにリラックスして眠ります。

 こちらが会話をしていると、ケージをかじりながら「自分もかまって」とばかりクネクネダンスを始めたり、指で喉や背中を撫ぜると、幸せの絶頂とばかりの恍惚の表情を浮かべます。座敷で散歩させる時も、名前を呼ぶとやってきて、ハウスと言えばケージに入ってくれる時もあります。初めての人だと身を隠し、なれてくるとスキンシップをおねだりしたりします。

 そもそもひとりぼっちを不安がる高齢の母の慰みとして家に迎えたのですが、今や我が家にとって欠かせないアイドルです。
 分かった事は彼らにも繊細な心があるということ。そして強く感じたこと、それはこの世に命を授かるということは、心を授かることと同じことだということを。

ミネルヴァの梟がいま飛び立つ