『時間がいっぱい』でもどちらの選択も絶望的(自分の人生に影響を与えた本)
2023年1月17日
中学校の図書館で短編SF小説に出会いました。題名は『時間がいっぱい』。ずいぶん経ってから知ったのですが、著者はSF映画の金字塔『2001年宇宙の旅』で知られるアーサーCクラーク。
ある時、見知らぬ男が主人公に盗みを依頼します。著名な博物館や美術館にある数々の有名な世界遺産レベルの品々。莫大な報酬が提示されますが、盗みのプロフェッショナルである彼も、厳重な防犯施設に守られた数々の品々を自分一人で盗み出すのは余りにも非現実的なことなので断ると、依頼人は「この機械を使うと時間が止められる」と言います。
人の流れも交通も全てが写真のように静止し、彼は喜びつつも簡単すぎる仕事に拍子抜けしながら、全ての約束の品々を集め終わり、依頼人は全貌を語り始めます。
実は未来から来た公的機関のエージェントで、数分後に核戦争で地球は壊滅的なダメージを受けること、その前に人類の大切な遺産を回収しに来たこと、機械によって静止しているように見える時間は体感出来ないほどゆっくりと動いていて、いつかはその時を迎えることなどを告げます。
今、時間解除ボタンは押せないが、静止した孤独の世界にどれだけ耐えられるかと悩む主人公は呟きます。「ゆっくり考えよう。時間はいっぱいあるんだから。」